【14】第315回定例会議
   平成24年12月10日

質問者:水田裕一郎 県議
答弁者:大西   教育長

(水田裕一郎県議)

(前略)

 兵庫県内各地で秋の収穫を祝う神事に伴って、毎年盛大に祭りが行われている。私の地元の姫路市においても「灘のけんか祭り」として知られる白浜の松原八幡神社の祭り、「提灯練り」として知られる網干の魚吹八幡神社の祭り、「台場差し」で知られる飾磨の浜の宮天満宮の祭りなどでは個性豊かな神輿(屋台)が数多く見られる。大塩の大塩天満宮の獅子舞や、家島真浦の家島神社の檀尻船上の獅子舞等の民俗芸能も多彩に繰り広げられている。

 祭りは地元住民のみならず、多くの観光客を引きつけ楽しませており、世界文化遺産である国宝姫路城に優るとも劣らない、郷土が世界に誇れる有形・無形の文化財であると思われる。華やかな祭りの裏方では、役割を分担し、多くの時間と熱意をつぎ込み準備を進める地域の人々の姿があり、祭りには歴史や文化や社会、言わば地域コミュニテイのエッセンスが凝縮されており地域社会の創造に大きく貢献している。兵庫県立大学環境人間学部の合田博子教授は祭りについて調査し「しつけ・学校教育・社会教育・職業教育という段階があり、その場その時に応じて社会化して行き、その社会の人間になれるわけだが、今日では家庭の崩壊や学校教育に頼れない情況にあっても、祭りがあれば子どもの社会化がスムーズに行われる」と、祭りが子供の成長過程での社会適応化に役立つ事を指摘されている。合田教授は更に「社会生活が失われたところには文化も残り得ない。形骸化した文化を保存するのではなく、生きた文化が創造される社会を強くする事に祭りが寄与する。その人たちの社会が生きていないと、文化も祭りも続かない」という趣旨のご意見を述べているが、それは私が常々考えていた事で、祭りは単なる伝統文化遺産というのではなく、現代社会においても、地域コミュニテイを主体としたまちづくりに重要な役割を担っている事を再認識したところである。

 現在姫路城の傍にある兵庫県立歴史博物館においては「ひょうごの祭り」と題した展示スペースで、屋台2基と写真やパネルで祭りが紹介されているが、狭いスペースで展示物の定期入れ替えが行われていない為、県下の祭り全般を広く知らせるのには些か不十分だと思われる。神輿等に見られる伝統工芸やその技術などの継承もその職人の後継者が減少しつつある今、何らかの対策が必要である。県内各地で行われている伝統的な祭りとそれを支える社会文化への関心を高め保存し、次世代に継承すると共に、その魅力を対外的に発信する事にもっと力を注ぐべきではないかと思う。他府県の取組として、地域の伝統文化の継承と発信の拠点として「岸和田だんじり会館」や「曳山博物館」・「高山祭り屋台会館」等が整備されている。また平成20年には「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律」通称「歴史まちづくり法」が制定され、歴史的な街並みや人々の活動からなる歴史的風致を守ろうとする機運が生まれ、全国で取り組みが始まっている。そこで私の地元では以前から動体としての祭りだけではなく、静の屋台の美しさも魅了できる「播州屋台会舘」の建設へ向けた取組がなされているが、この様な取組を含めて、祭り文化の継承と発信に関する活動に対して、県としてどのような支援策を考えているのかお伺いする。


○(大西教育長

 郷土の祭りは、地域の幅広い年齢層が一堂に会し、地域共同体を意識できる重要な行事である。そして、地域で長年育んできた生活様式や次世代への社会規範を伝える役割を有した多面的文化資源の結晶であると認識している。県教委では、この祭り文化を後世に伝えるべき重要な文化遺産として「播磨の祭礼−屋台とダンジリ−」等、県内の祭り行事の悉皆調査を近年毎年続けている。これに基づき文化財指定をすると共に、その詳細結果の発信を行い、地域にその価値を啓発しているところである。

 歴史博物館の兵庫のまつりの展示は、ご指摘のとおり限られたスペースの為、入れ替えが容易でない面もあるがが、今後より工夫した展示を考えていく。また、来年1月から開催する特別展「姫路・城下町の祭礼−播磨国総社の三ツ山大祭−」など、今後とも祭り文化の発信に積極的に取り組んでいく。平成20年の「歴史まちづくり法」の制定によって市町が行う歴史的町並みを背景とした祭礼等の継承事業も可能となった事から、まちづくりに祭礼等を活かし、まちづくり文化の継承を促進する好機がきていると考えている。「灘のけんか祭り」をはじめ、播磨の屋台祭礼の壮大な練り合わせは世界にも誇りうる祭りであると考えている。

 議員ご指摘の「屋台会舘」についても、地域で議論がされていることは承知いるので、今後とも地域での取り組みを踏まえ県としてもできる限りの支援を行い
、祭り文化の継承と発信に努めていくのでこれからもご指導をよろしくお願する。

【屋保連見解】

 先日の決算特別()での質問とは違い、水田県議は具体的に「播州屋台会館」と云う固有名詞を出して、県としてどの様な支援が出来るかと問うた。これに対し教育長は、具体的な内容には触れなかったが、地域での取り組みを踏まえるとしながらも、県として出来る限りの支援を行うと明言した。「屋台会館」建設に向けて大きな支援が得られる可能性が高まったと云う意味で非常に意義深い質疑応答であったと言える。