棟(むね)・紋(もん) |
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船大工の技術が取り入れられていると云う、全国で唯一無二の神輿屋根。細い野地板を並べて流れる様な見事な曲線を描く。
今回は宮殿師(くうでんし)・奥居隆夫師の協力を得て、棟の内部構造が見られる様にした。
稀に白木のままの屋台もあるが、殆んどの屋台は塗師が漆塗りをし完成させる。本ミニチュアでは、漆塗りの60にも及ぶ工
程を、塗師(ぬし)・砂川隆師に分かり易く示して戴いた。
また棟の中央に位置する紋は、屋台そのものの或いは地区のシンボルマーク的な役割も果たしており、数多くの意匠がある。
本屋台ではポピュラーな二つの紋、すなわち天満宮の氏子屋台に多く施される「梅鉢紋」と、八幡宮の氏子屋台に多く取り入
れられている「左三つ巴紋」とを採用した。 |
露盤(ろばん) |
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露盤は、擬宝珠(ぎぼし)の基台になる部分で、多くは、檜(ひのき)などの木を彫刻したものに、塗師が彩色(さいしき)を
施す。また数は少ないが、金具製のものもある。
今回の『播州匠の技屋台』では、彩色せず木目が良く分かる様木地のままにし、図柄は「宝船−七福神」を採用し、棒谷
雅敏師に彫って戴いた。 |
昇総才(のぼりそうさ)「箱打ち」「総打ち」 |
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棟の頂上から四隅へ流線型を描く昇総才。
取り付けられる金具を役物と言うが、吉兆(きっちょう)すなわち良い事が起こる前兆として現れる霊妙(れいみょう)な獣
(けもの)いわゆる神獣(しんじゅう)を取り入れる場合が多い。今回は虎・獅子・飛龍(ひりゅう)・麒麟(きりん)を採り入れ
た。
また役物を取り付ける地金具には、分割された「箱打ち」地金具と、ひとつながりに見える様な「総打ち」地金具がある。
今回のミニチュア屋台の錺金具は、北角和久師にお願いした。 |
総才端(そうさばな)・井筒端(いづつばな) |
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昇総才の突端の部位が総才端(そうさばな)。
その鏡面にも鷹(たか)や鳳凰(ほうおう)や龍(りゅう)、などの役物を取り付ける場合が多いが、
八幡宮・天満宮の文字を施している地区も多い。
今回は「鯉」に加え、棟の梅鉢紋・左三つ巴紋にちなみ、「天満宮」「八幡宮」を意匠した。
そして四本柱の要・井筒端(いづつばな)の鏡面も、紋・総才端と一貫させるため「梅鉢」と「左
三つ巴」とにした。 |
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水切金具(みずきりかなぐ) |
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棟の底辺を水切りと言うが、ここにも神獣は勿論、歴史場面やめでたいしるしである瑞祥(ずいしょう)などの役物金具が施
される。
本ミニチュアでは「龍虎」と、正月の初夢に見ると良い事があるといわれる夢見瑞祥(ゆめみずいしょう)「一富士二鷹三茄
(いちふじにたかさんなすび)とを配した。 |
天蓋(てんがい)・垂木(たるき)・斗組(ますぐみ) |
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乗り子・太鼓打ちが乗る上部、天蓋(てんがい)も本格的に漆を施し、金箔を押した。
棟の軒下にあるのを垂木(たるき)と言うが、二段のものや三段のものが有る。ケラボウあるいはセンボンと呼ばれることもある。
今回は、白木の垂木にプラチナ箔を押した!
錺金具を施された棟の重さを、しっかりと支えるのは四隅にある斗組(ますぐみ)。極めて高度な技術が要求される。本ミニチュ
アでは、これまた本格的な「三手組」に、箔押しをした。 |
狭間(さま) |
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さて、いよいよ狭間(さま)。垂木の下にある彫刻を狭間と
言うが、神代(かみよ)から明治時代までの歴史の場面や、各
地区に因んだ風景などが題材になる事が多い。
『播州匠の技屋台』では、木取りを若手の大工・横野辰徳師
のお手を煩わせ、図柄は見応えある「竹林の虎」「龍」「唐
獅子牡丹」を採用。それぞれ大木光師・前田貴史師・高場正
良師にお願いした。 |
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水引幕(みずひきまく) |
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四本柱に巻かれているのを水引幕(みずひきまく)と言う。
手法としては縫い以外にも、蜀江(しょっこう)や雉子(きじ)
などの文様を織ったものがあるが、『播州匠の技屋台』では
ポピュラーな縫いを採用し、川村定弘師にお願いした。
水引幕の図柄も狭間と同様、歴史の場面や神獣が刺繍され
る場合が多く、本ミニチュアでも『龍」と「虎」とにした。
特に虎に於いては、工程がよく分かる様に縫いを施す前の段
階に留めた。 |
高欄掛(こうらんがけ) |
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乗子が座る周りの囲みを高欄(こうらん)と呼ぶが、ここに
も豪華な縫い物が飾られる。それが高欄掛(こうらんがけ)で
ある。やはり図柄は神獣や退治物、或は地区に因んだ場面・
風景が多い。
『播州匠の技屋台』ではユーモラスさもお楽しみ戴ける様、
「金太郎」と「熊」とを配した。 |
高欄・男柱金具(こうらん・おとこばしらかなぐ) |
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高欄の四隅の柱を男柱と言い、ここに取り付ける金具には、
本ミニチュアで採用した「昇鯉(のぼりごい)」などの縁起物
や、「龍」の様な邪鬼物、また「梅に鶯(うぐいす)」など風
流な意匠(いしょう)もある。 |
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その他の《こだわり》 |
太鼓(たいこ) |
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太鼓は屋台を動かす源。そのリズム・強弱により屋台に躍
動感が生まれる。それだけに太鼓を打つ乗子は、祭りの花形
と言える。
“構造開示型ミニチュア”と銘打った本屋台では、鏡面を透
明にして太鼓も内部構造が見える様にした。ちょうさ屋殿の
労作である。 |
伊達綱の環(だてづなのかん)・弦の綱(げんのつな) |
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以上、職人さん方の渾身のご協力にて、ミニチュアとは思えない本格的な屋台が完成したが、上の太鼓のほかにも、ホン
モノを再現するために、細部にもこだわった。 それが、この「伊達綱の環」と「弦の綱」である。 |
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