意を彫り技を刻む

〜匠の技−播州祭り屋台彫刻展〜
  
■ 場面紹介 (その4) ■
 

戻橋の鬼
 
強盗・追剥の横行する京の夜を、馬に乗り見廻っていた、頼光四天王の一人渡辺綱が、一条戻橋にさしかかると、一人の美女に、馬に乗せて欲しいと頼まれた。橋を渡り掛けた時、川面に写る鬼の姿に、美女の正体を見破った綱は、刀で腕を斬り落とした。後日、綱のお婆さんに化けた鬼が家に訪ねて来て、鬼の腕を見せてほしいと頼まれ、腕を入れておいた箱を開けたところ、鬼の姿に戻ったお婆さんは、腕を掴み空高く飛び去った。
 

小督局琴の曲
 
高倉天皇が寂しがっているのを知った皇后であり、平清盛の娘である建礼門院は、琴の名手・小督局をお側にお勧めした。局は天皇の寵愛を受けるが、清盛が局を敵視した為、嵯峨野に身を隠してしまった。天皇は源仲国に探し出す様命じ、或る秋の月夜、嵯峨野にて、聞き覚えの有る想夫恋の琴の音を耳にした仲国は、所持する笛を吹き合わせ、局を探り当てたと云う、狭間には珍しい恋愛ものの場面。
 

張良と黄石公
 
秦の始皇帝暗殺に失敗した、漢三傑の一人・張良が、黄石公と云う不思議な老人と出会い、老人が川に落とした沓拾いなどで心を試され、その人柄を認められたところから、太公望の兵書を授けられると云う物語。
 

矢の根
 
父の仇を討つ為、矢の根を研いでいた曽我五郎時致が砥石を枕にうたた寝をしていると、兄・十郎祐成が、工藤祐経の館に捕らえられているので、助けて欲しいと夢に告げた。即座に飛び起きた五郎は、通り掛かった大根売りの馬を奪い、曽我より大磯へと駈け出すと云う場面。
 

金龍武王を護る
 
悪名高き、殷の紂王を滅ぼさんと、太公望と図り、数万の軍で帝都に押し寄せた武王は、八十万騎の殷軍と戦う。武王軍優位に進むも、紂の方相、勇敢にも討ち進み、長槍を以て武王を突かんとした。その時、八爪の金龍現れ武王を護り、武の将、遂に方相を生け捕った。
 

天元一石図
 
唐に留学中、その才能を唐人に妬まれ幽閉されたい吉備真備が、或る風雨の夜、遣唐使の安倍と名乗る鬼に、その子孫の日本での様子を話してやると、鬼は大いに喜び、恩返しに唐の国事を教えてやると約束した。或る時、唐人が囲碁で以て、真備をやっつけようと謀ったが、鬼が三百六十目ばかり組んで教えたので、唐の名人との対局にも勝負がつかなかったと云うお話。
 

中川瀬兵衛九度敵兵を追い退く
 
賤ヶ岳合戦に於いて、大岩山砦守将・中川瀬兵衛清秀は、敵将・佐久間玄蕃の猛攻を受けるも、僅か三百の手兵を指揮し、正に獅子奮迅の戦い振りで、佐久間の大軍を九度に亘り、追い退けたと云う。
 

四王天但馬守大勇馬を抛る
 
中国大返しの途次・尼崎にて、明智軍の待ち伏せに遭った羽柴秀吉は、廣徳寺へ駆け込み、門内より後を見れば、仁王の再来・四王天但馬守が追いかけて来るのが見えた。乗り馬を降りた秀吉は、太刀を以て馬のしりがいを突き四王天の方へ向け突っ込ませた。四王天、あわや蹄に掛かり、蹴り殺されるかと思った刹那、身を沈め馬の両前脚を抱え、どっと深田に投げ込んだ。
 

明智左馬介唐崎より坂本城に入る
 
山崎合戦の敗報を聞き、安土城に火をかけ、坂本城に向かう途中、打出の浜で堀秀政軍と遭遇戦になった明智光春が、坂本城を気に掛け、唯一騎、名馬大鹿毛にて琵琶湖を渉り、唐崎の浜へ乗り上げ、一本松に馬を寄せ、木の根に腰を掛け、軍扇にて暑気をしのいでいるところ。この後、坂本城に入る際光春は、この駿馬の命を惜しみ、十王堂の格子に結び付け、敵に送り、命を助けたと云う美談がある。
 

      
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